新たな思考法が見つかった!参加したからこそ見えた世界「Knot Program 2023」振り返り座談会

  1. Knot program 2023

ヘルスケア領域における課題解決を行い、かつ、しっかり儲けるインパクト起業家を育成する「Knot Program(ノットプログラム)」。2023年度のプログラムは、5月の合宿からスタートし、11月に開催された「Healthcare Venture Knot Program 2023」のピッチコンテストでの発表をもって修了しました。

ピッチコンテストから2ヵ月半が経過した2024年2月3日、プログラムに参加した5名の起業家と、伴走した5名のメンターが集結!それぞれが抱えるテーマを磨き上げた約半年を振り返り、「今だから言えること」、「Knot Programに参加する起業家に向けてのメッセージ」を送ります。


募集締切:2024年3月7日



Knot program2023概要

プログラム期間:2023年5月〜11月
目的:ヘルスケア領域において現場で起きている課題解決を起業という手段を用いて実践する
目指す姿:「この課題を解決できたら、〇〇がこんなにも良くなるのに!」と考えているヘルスケア領域の課題とその解決策について自らの言葉で伝え、インパクト投資家からの共感を得る
形式:月1回の定例会(オンライン+対面)
メンタリング:プログラム期間中はメンターが1on1で伴走します
運営:株式会社キャピタルメディカベンチャーズおうちの診療所

<プログラム内容>


2023年11月18日に開催した「Healthcare Venture Knot Program 2023」でのピッチコンテストの様子


参加起業家

※敬称略、順不同
・深澤裕之(Nurse and Craft株式会社 代表取締役)
テーマ「まちを再生する訪問看護」
・叶卓史(株式会社norths 代表取締役)
テーマ「同じ境遇を持つ仲間と体系的な学びを共有するオンライン道場『zenow(ゼノウ)』」
・川﨑淳子(株式会社 flagMe COO)
テーマ「高齢者施設での看取りを推進する『みとring』」
・近藤奈央(すずな代表)
テーマ「メディカルツーリズムによる地方医療の再生支援サービス」
・田中圭(株式会社セラピア 代表取締役)
テーマ「世界初のうつ病予防アプリの開発」


メンター紹介

青木武士(株式会社キャピタルメディカ・ベンチャーズ 代表取締役)
後町陽子(株式会社キャピタルメディカ・ベンチャーズ マネージャー/キャピタリスト)
和田誠一郎(マネックスベンチャーズ株式会社 代表取締役)
石井洋介(株式会社omniheal 代表取締役 おうちの診療所中野 院長)
甲浩子(おうちの診療所目黒 事務長)
木野瀬友人(株式会社omniheal/名古屋市経済局イノベーション推進部スタートアップ支援室 客員起業家)


振り返りトーク

2024年2月3日にプログラムの振り返りを兼ねた修了式として東京・神保町に集結(場所:キャピタルメディカ・ベンチャーズ ベンチャーオフィス)


ブレークスルーのための思考法を探していた

――Knot program 2023に応募したきっかけ、期待していたこと、参加して良かったことは?

田中 もともと医療アプリを作ろうとして起業したのですが、外注して失敗した経験があり、そのままずっと寝かせて別の事業に取り組んでいました。忙しさにかまけていると進まない、プログラムに参加すればきっと強制的に進められる、と思い、応募しました。プログラムに参加してビジネスプランを練る中で、プロトタイプを作って実証まで持っていけました。参加しなければ絶対に今もできていなかったと思いますね。

田中さん(株式会社セラピア 代表取締役)



深澤 ヘルスケアに特化したプログラムがあることをXを通じて知り、ヘルスケア領域の人脈と繋がりたい、と参加しました。人脈を築けたのはもちろんですが、過疎地で事業展開していたものの、「あれもこれも」という状態になっていて整理がつかなくなっていたんですね。「なぜやるのか」という原点から思考の整理ができたと思います。

深澤さん (Nurse and Craft株式会社 代表取締役)



近藤 イノベーター育成のイベントで後町さんに出会い、プログラムのことを教えていただきました。新規事業で起業したいと思いながらも行動が出来ていない状態だったのですが、「変わりたい」という思いが強くありました。プログラムでは1対1のメンタリングを受けられること、起業家仲間と出会えることに期待して参加しました。半年かけて、「確かに変わった」という実感があります。

近藤さん(すずな代表)




叶 僕も後町さんに面談を受ける中でプログラムを紹介してもらいました。その前に1年半ほど資金調達に挑戦していましたが、VCの方に「数字は?」と言われ続け、低迷していたんですね。「インパクト投資家」という存在についても初めて知り、興味を抱きました。実際に参加して学んだ「ロジックモデル」が新鮮でした。プロダクトを作っていると、どうしても自分たちの価値をベースにしてユーザーがどう動くか、という思考に偏りがちでしたが、「アウトカムを切り分けて考える」という思考を身につけることができました。

叶さん(株式会社norths 代表取締役)



川﨑 近藤さんと同じく、イベントで声をかけていただきました。「看取り」というテーマがビジネスには乗らない、ということはすでに指摘されていたのですが、じゃあ、どうすればいいのか、ということが分からない状態でした。実はプログラム内容を見ても「VCって何?」という状態でしたが、メンターに伴走していただけると知り、食いつきました!

川﨑さん(株式会社 flagMe COO)



「合宿」で密に、じっくりコミュニケーションできた

――4月から11月の最終発表会まで、オリエンテーション、合宿、月ごとのオンライン定例会や事前発表会などを開催してきました。印象に残っていることは?

川﨑 全てが勉強になりましたが、強いて言えば合宿がなかったらここまで皆さんと親密にはならなかっただろうなと。帰りの飛行機ですごく満足感があったことを覚えています。


叶 僕も合宿が印象的でした。それまではVCにアタックしたりプレゼンしてジャッジされたりという経験を繰り返していましたが、VCの質問の意図がよく分からない時期もあったんですね。合宿で議論し、自分の思考の偏りについてフィードバックを受けたりできて、「あのとき自分はこういうことを聞かれていたんだな」と気づくことができました。最終日のコンテストでのピッチは、自分なりには過去イチの出来でした!



近藤 合宿で「セオリーオブチェンジ」を学べたことが大きかったです。実はそのときに完全に理解できていたわけではないのですが、最後の一カ月ぐらいになって「こういうことだったのか」と理解できました。キャッチコピーやビジュアルについての講義も面白かった。今までは営業の際に言語で伝える努力はしていましたが、相手から無限に時間をもらえるわけではないときに、相手の心を動かすには目から飛び込むビジュアルが大事、という講義が自分にとっては神回でした。


深澤 僕も合宿で……申し訳ないです(笑)。実は一昨年ぐらいに孫泰蔵さんにピッチをさせてもらったことがあるのですが、「なぜそれをやるのかを説明しなさい」とめちゃめちゃダメ出しされたんです。あまりに根源的過ぎる問いだったので自分で考えてもとっかかりを見つけられず、答えを出せていませんでした。でも、合宿に参加したときにその原点となる答えが見つかる、という体験をしました。

5月に開催した1泊2日の合宿は高尾山の麓で実施
夜は焚き火を囲み、起業に関する熱い話題や、日頃の悩みの共有など、様々な会話が繰り広げられた



田中 違う流れを創りたいんですけど、僕も合宿です(笑)。「セオリーオブチェンジ」や、みなさんと作ったアプリなど、あのときの学びが今もリアルに生きていると思います。あと、教えてもらった「ヨコタツ体操」をやった後にやたら頭が冴えたなぁと思って。今でも寝起きとか、頭がぼーっとしているときに役立てています!

合宿2日目の朝は、スタッフの横田さん(理学療法士)の「ヨコタツ体操」からスタート!



メンタリングによって「これが言いたかったんだ」と気づいた

――プログラム期間中は起業家のみなさんにメンターが11で併走しました。メンタリングを受けて、どうでしたか? メンターの感想も教えてください。

田中 後町さんに毎週オンライン面談をやっていただきました。「次回までの目標はこれ」と課題が与えられたことでお尻を叩いてもらいました。毎週話すからには進捗を出さなきゃ、という義務感がいい感じのプレッシャーに。ピッチのためのプレゼン資料も遅れ気味だったのですが我慢強く待ってくださって、ブラッシュアップできたと思います。

メンター:後町 はじめはメンタリングをどのように進めるべきか、と考えすぎて構えていた部分があったのですが、ペースのコントロール役になることや、本人の目標や課題を一緒に言語化する、といったシンプルなことでできることがたくさんあるんだな、と気づきました。

田中さんとメンターの後町さん



深澤 毎週時間をいただけることがとにかくありがたく、「話せることを用意しよう」と準備していました。青木さんから「深澤さんは過疎地の高齢者について一番詳しくないとダメだ」と言われたことをきっかけに、今も積極的にインタビューをしたり、高齢者の方の集まりにはなるべく顔を出すよう意識しています。何も話題を用意できないときには世間話をしたりして、よく考えたら毎週おじさんと笑ってるな、と(笑)。いい時間でした。

メンター:青木 話すうちにパーソナリティが見えてきましたよね。深澤さんはビジュアルで伝えるのがすごくうまくて。表現方法も人それぞれ違うということを学ばせてもらいました。

深澤さん(左)とメンターの青木さん



近藤 結構しんどかった(笑)。いい意味で、ですよ? 「研究じゃないんで、ちゃんと事業を回してください」とか、木野瀬さんにはズバズバとマインド面から鍛えていただきました。きついなぁと思うこともありましたが、人間的にかなり成長したと思います。

メンター:木野瀬 最初の頃は僕自身が近藤さんの強みを聞き出せていなかったんですよね。いろいろ発見しながら、「こういうことを押し出さないともったいないよ」とアドバイスしましたね。地方創生で病院を再生させたい、でもどうすればいいかわからない、となったとき、僕も周囲の人にヒアリングをしたりして。逆に近藤さんにメンタリングもしてもらったり、最終的には相互作用できる良い関係になりました。

近藤さん(右)とメンターの木野瀬さん



叶 兄貴(メンターの和田さん)に出会えて良かった! 僕にとってVCは常に叩いてくる人で、極論でいうと敵でした。起業して一人でやってくる中で、思考が閉じこもっていたかもと思います。和田さんがコーチング的なスタンスで関わってくれて、毎週お題を与えてもらい、一週間考えて話す、という繰り返しで思考が研ぎ澄まされたし、表現力も高められた。この経験が自分の事業にも還元されています。今教えている選手から、「出会えて良かった」という感想をもらえる状況になっています。

メンター:和田 合宿の終わりに途中下車して、二人でくら寿司に行ったら、全然僕が頼まないようなものを注文していて「若い20代男子なんだな」と(笑)。あのときに彼とのスタンスを決めることができました。起業家の方々って、取り組む課題の大きさに対して、自分がやっていること、体験していることの価値を過小評価しがちなんですよ。彼はその典型例だと思い、彼のバイアスを戻さなきゃいけないし、逆に、「それはあなたにとっていいことかもしれないけれど他の人にとってもいいかどうか分からないよね?」と問うような作業を常にやっていましたね。面白かったです。

叶さん(左)とメンターの和田さん



川﨑 最初のうちはメンターの石井さんと全く話がかみ合わなかったんですよね。それで、石井さんが「この原因は、地方と東京との違いではないか」と気づいてくれて、じゃあ整理してみよう、と言いたいことを構造化していきました。私達は3人で参加していたのですが、最初はメンバーの中でも意気込みややる気にも温度差があったのです。でも、石井さんのメンタリングを受けることで全員の心を一つにすることができました。事前発表会でコテンパンだったときに泣きたい気持ちだったのですが、石井さんが「大丈夫だよ」と。それに加えて「優勝するんだよ」「みんなの前で発表して認められるということを積み重ねることが企業としての成長につながるんだ」とおっしゃって。結果、本当に優勝することができました。

メンター:石井 2回連続優勝しているメンターです(笑)。互いに話す中で、途中から後半に向けて「ACP(アドバンス・ケア・プランニング)は地方では全然できていない、その事実こそビジネスチャンスなのではないか」、と気づいて、作戦を練っていったんですよね。集中的に話し合うことができて良かったと思います。

川﨑さん(左)とメンターの石井さん


「エントリーしないと舞台に立つことはできない」

――みなさんがそれぞれ今後挑戦していきたいこと、そして最後にこれからKnot programに参加する起業家に、メッセージをお願いします!

川﨑 事業を形にするべく、動き続けていきます。こんなに温かいプログラムはなかなかないと思います。月1回という頻度や、少人数制なところもお薦めです。



叶 今年は調達を可能にして加速していきつつ、足元も固めていきたいです。このプログラムは“ロマン(インパクト)とそろばん(儲かる)”、両方叶えたい人にぴったりだと思います。


近藤 事業化を考えながらさらに前進していきます。変わりたい、挑戦したいと思いつつ踏ん切りがつかなかった人――それはかつての私なのですが、半年間という時間をかけて楽しく併走してもらえるこのプログラムに応募しない理由はないと思います!



深澤 最近、ある方に、「何年後かにあなたの会社は多くの自治体から感謝されるはずだ。だから私達は応援するんだ」と言われたことに感動したんですね。また、CTO(最高技術責任者)が加わってくれることになり、IPO(新規上場株式)を果たす覚悟を決めました! ピッチコンテストの舞台に上がったときに、「こんな舞台を用意してくれるのってありえないな、感謝しなきゃいけないな」と思いました。エントリーしないことには舞台に立つこともできません。ぜひエントリーを!



田中 新たな体制を作り、資金調達していきます。ヘルスケアをテーマにしたプログラムはいくつかあると思うのですが、このプログラムは、「社会にいかにインパクトを与えるか」という色が強く、ヘルスケアに特化した志向の人に多く出会うこともできます。ヘルスケアでインパクトを与えたい人、ぜひ参加をお薦めします。


――みなさん、どうもありがとうございました。



現在、Knot Programでは、2024年度の参加者を募集しております。以下の募集ページを確認の上、お申込みください。

募集締切:2024年3月7日



Text:柳本 操
photo:ひろし