【第3回Knot Program】競合との差別化を図るには?戦略的に市場分析してみよう

  1. Knot program

いよいよ中盤戦に差し掛かってきたKnot Program。どのチームも目指したいプロダクトやサービスの大枠が見えてきたというところでしょうか。

さて、今回のテーマは「市場分析と価値創出」について。市場規模を把握し、戦うべき市場や顧客数を見極め、具体的に価格設定する方法について学びました。

今回、講師の中山航介さんより目からウロコな分析のヒントを丁寧にレクチャーいただき、質疑応答やオープンチャットは大盛況でした。では、イベントの内容を詳しく紹介していきましょう。


【イベント情報】

実践型起業家育成プログラム「Knot Program」第3回定例会

主催:株式会社キャピタルメディカ・ベンチャーズ、オンラインコミュニティSHIP

日時6月15日(水) 19:00〜20:30
イベント内容参加者による「市場分析と価値創出」についての発表・講義
講義内容「市場分析」
参加者<講師>
中山航介氏(DIMENSION株式会社 Business Producer)

<発表者> ※発表順
1) B氏(薬剤師)※1
2) 山田貴信氏(PreMed株式会社取締役│循環器内科専門医)
3) 畔原篤氏(薬剤師│公衆衛生学修士)
4) 高木大地氏(株式会社Cone・Xi代表取締役│看護師)
5) A氏(皮膚科医)※1
6) 氏家氏(株式会社Plusbase COO)

※1:匿名表記と致します。

<コメンテーター>
青木武士氏(株式会社キャピタルメディカ・ベンチャーズ) 

<司会進行>
河村由実子(株式会社キャピタルメディカ・ベンチャーズ)



【講師紹介】
中山 航介氏 DIMENSION株式会社 Business Producer

上智大学経済学部卒業後、新卒で株式会社ドリームインキュベータに参画。大企業向けコンサルティング、事業投資先への出向(データベース運用・分析)を経て、国内ベンチャー投資を担当。学生時代には、製薬企業向けの市場調査、東南アジアの現地調査に従事。


ヘルスケア領域の市場分析は法規制を踏まえる必要がある

ヘルスケア領域の市場分析は独特です。国の方針や健康保険の加算などの法規制を踏まえてプライシングを考える必要があるからです。しかし、だからこそ分析を通じて自社の強みを活かせれば参入できる切り口があるともいえます。例えば、令和元年の薬機法改正に伴い、オンライン服薬指導が一部解禁になったことで、参入したサービスもあります。

さらに大切になってくるのが他社との差別化です。自社の強みを活かして顧客にベネフィットをもたらす仕組みづくりを目指しましょう。

事業構想時の市場分析3step

はじめに、基本となる事業構想と市場分析について、3stepで説明します。論点・仮説・検証を段階的に繰り返すことで市場における課題や価格が導き出せます。

(1)論点

「誰に、何を、いくら、どのくらい」

スタートアップのビジネスモデルを可視化し、ターゲットと市場規模のほか参考価格をあぶり出します。


(2)仮説

「この人は○○に対して悩んでいる。既存の代替手段に払っている金額から、〇〇くらいのお金を払えるはず」

論点であげた顧客に対し、具体的な課題内容を発掘し、自社のサービスに払える価格を想定します。


(3)検証

「リサーチして発掘した悩みや課題が本当に市場にあるのか。お金を払う余地はあるのか」

仮説に対し、本当にそうなのか?という疑問をフラットに明らかにします。

この3stepをまずは小さい規模で開始し、徐々に展開していくことがポイントです。

分析するときは目的によって手段を明確に分ける

次に、具体的な分析方法を見ていきましょう。前提として、分析方法は明らかにしたい目的によって手段を分ける必要があります。1つ目は課題について全体像を把握したい場合。2つ目は課題感を検証したい場合です。 


市場の全体像を把握したいとき

市場の全体像を把握する場合は、インタビュー時にオープンクエスチョンを意識します。「最近職場で困っていることはなんですか」など、ざっくりとスタートを切るのがおすすめです。

また、サービスの構想についてアイデアを得るために業界新聞も押さえておきましょう。薬事日報や官公庁のレポート記事、中医協※の議事録には、既存のマーケットや施策情報が網羅されているので読まない手はありません。

さらに、手軽な方法としてはキーワードプランナーなどのツールを用いてキーワード広告や検索ボリュームを調査すれば、市場の課題を大まかに掴めます。

※中医協:中央社会保険医療協議会

課題感を具体的に検証したいとき

逆に課題感を検証したい場合はクローズドクエスチョンを用います。なぜなら、課題を解決する既存の代替手段(サービス)にいくら払っているのか、またその理由を明確にできるからです。つまり本当のライバル、潜在競合を明確に把握でき、自社の強みをどう盛り込むか検証できます。

さらに、ターゲットとなる顧客数を把握するために顧客の性質や払える価格帯でグループ分けしてみましょう。それらが分かれば自分たちのサービスの目標売上・業務フローの目処が立ちやすくなります。

しかし、どちらの手段を用いる際も注意点があります。それは膨大なデータに溺れないようにすること。つまりデータを追いすぎて本当の課題感や市場を見失わないように気を付ける必要があるのです。


課題解決にいくら払うのか?インタビュー設計に注力し、解像度を上げよう

さらにインタビュー設計は、課題解決につながるプロダクト・サービスの方向性や価格設定を決定づけると言えるほど重要です。BtoB、BtoCどちらの場合でも「誰にどのような質問をし、何を明確にしたいか」を予め整えておきましょう。

特に、誰に聞くかによって把握できる顧客層が異なり、課題の優先順位が変化します。まずはターゲット顧客候補を絞り、当てはまるユーザーの悩みに寄り添うことで解像度の高い率直な意見を得られます。

また、忖度のない回答を得る工夫として「あなたならこの商品いくらで売りますか? なぜその価格なのですか? どうやって売りますか?」といった自分ごとに置き換えてもらう聞き方も手段の一つです。


具体的に価格設定をしてみよう

最後に具体的な価格設定の方法についてみていきます。

切り口としては、大きく3つに分けられます。

1つ目は既存の市場で売り出す場合です。価格帯を他社サービスと揃えれば、買い手の納得が得られやすいでしょう。さらに競合との差別化を図るために、顧客から見たサービス内容の違いをアピールすることがポイントです。

2つ目は新規領域の市場においては、法規制に則って算出するトップダウンモデルが一般的です。例えば、保険点数や薬剤1錠あたりの薬価に準じて価格を決定するような場合が当てはまります。

3つ目は自社のサービスを取り入れることで、顧客がいくら儲かるかというボトムアップ、付加価値の視点です。新規領域の市場でも一定の根拠のある説明が可能となるでしょう。


【まとめ】

目的や基準を明確に!市場分析は戦略が命

今回、参加者の皆さんには事前課題として市場分析と価格設定で難しかった点についてピックアップしていただきました。

どの規模で顧客数を想定するのか、何を参考に価格を設定すればいいのかという疑問点が挙げられ、苦労と努力が垣間見えました。

しかし、講義のあとの以下の感想からは明確な指針や手段が明らかになり即実行しようと勢いづいた様子が窺えます。

「インタビュー設計時に何を明らかにしたいかという点をしっかり意識したいと思います。」

「顧客を想定する際のグループ化については新しい学びでした。」

「BtoBのサービスなら購入の意思決定者が誰なのか、何を導入すれば購入につながるのか知ることが大切だと理解できました。」


何を明らかにし何を解決するのか、目的や基準を明確にしてリサーチし、その裏付けをもとに戦略的に市場分析していきましょう。

さて、次回はちょうど折り返し地点。高尾山の麓で合宿が予定されています。前半戦の総括として、参加者の皆さんにここまでの学びを集約した上で事業ピッチをしていただきます。参加者同士で切磋琢磨し合い、ビジネスプランを改めて見直す大チャンスです。わいわい楽しみながら、お互い高め合いましょう!


プログラムの様子は、こちらのサイト内で適宜配信してまいります。また、キャピタルメディカ・ベンチャーズのTwitterや、SHIPのTwitterでもプログラムの様子は配信していきますので合わせて御覧ください。

【文=川村みさと】