インパクト起業家必須のアウトカム評価とリターンを最大化させるためのスタートアップマーケティング【第4回 KnotProgram2024 】
2024年8月20日、実践型インパクト起業家育成プログラム「Knot program(ノットプログラム)」の第4回定例会が開催されました。今回の講師は、静岡社会健康医学大学院大学の准教授である藤本修平さんと、株式会社キャピタルメディカ・ベンチャーズの本田克徳さんです。6チーム・10名の起業家たちは、事業構築に欠かせない「ヘルスケアサービスのアウトカム評価」と「ヘルスケア業界のマーケティング」について学びました。本記事では、第4回定例会での課題発表や講義の様子をお伝えします。
【イベント概要】
実践型起業家育成プログラム「Knot Program2024」第4回定例会
主催:株式会社キャピタルメディカ・ベンチャーズ、おうちの診療所 Presented by 東京ウェルネスインパクトファンド
日程 | 2024年8月20日(火) |
開催場所 | オンラインZoom |
内容 | 課題発表:「ヘルスケアサービスのアウトカム評価」 講義:「ヘルスケア業界のマーケティング」 |
参加者 | <起業家> ※敬称略、順不同 1) 高山 耕輔(株式会社EightLab ) 2) 鈴木 円香(株式会社COMARU) 3) 伴 大輔(TherapEase) 4) 酒井 和也(Reinvent health) 5) 鶴田 桂子(株式会社BANSO-CO) 6) 土井 理美(株式会社BANSO-CO) 7) 伊角 彩(株式会社BANSO-CO) 8) 大平 智祉緒(株式会社RingsCare) 9) 岡田 里香(株式会社RingsCare) 10) 上野 榛華(株式会社RingsCare) <講師> 藤本 修平(静岡社会健康医学大学院大学 准教授) 本田 克徳(キャピタルメディカ・ベンチャーズ) <メンター / スタッフ> 青木 武士(キャピタルメディカ・ベンチャーズ) 後町 陽子(キャピタルメディカ・ベンチャーズ) 河村 由実子(キャピタルメディカ・ベンチャーズ) 石井 洋介(おうちの診療所中野 院長) 甲 浩子(おうちの診療所) 横田 達之(おうちの診療所) 宮﨑 海里(おうちの診療所) 西河 佑夏(マネックスベンチャーズ) |
【講師紹介】
藤本 修平氏(静岡社会健康医学大学院大学(静岡SPH)准教授)
スタートアップ、総合商社グループでヘルスケア関連のアプリ・店舗・AIの開発責任者を歴任。研究分野は、ヘルスケアビジネスのマーケティングリサーチ、ロジックモデル評価など。
本田 克徳氏(キャピタルメディカ・ベンチャーズ キャピタリスト)
企業再生コンサルティングファームにて複数の小売企業のマーケティング領域での戦略立案と実行支援に従事した後、事業会社での介護事業者向けSasS事業、病院向けIoTデバイス事業などを担当。上場企業にて経営企画責任者としてM&A後のPMI、KPIマネジメントの体制整備、上場市場変更をリードした経験も有する。現職では投資・投資先支援等を担当。
【タイムスケジュール】
19:00〜19:05 イントロ
19:05〜19:50 課題発表「ヘルスケアサービスのアウトカム評価」講師:藤本修平氏
19:50〜20:20 講義「ヘルスケア業界のマーケティング」講師:本田克徳氏
20:20〜20:30 質疑応答・クロージング
課題発表「ヘルスケアサービスのアウトカム評価」
講師:藤本 修平氏(静岡社会健康医学大学院大学(静岡SPH)准教授)
7月に開催された第3回定例会では、ヘルスケアスタートアップのロジックモデルについて解説されました。今回はその講義を踏まえ、藤本さんから出題された以下の課題に対する発表が行われました。
<課題>
1. 事業の最終/長期アウトカムを1つ設定し、測定する尺度を決めてください
2. 初期アウトカムを1つ設定し、最終/長期アウトカムとの関連性を 理論的根拠とともに説明してください
6チーム・10名の起業家たちは、3分間の発表を行い、藤本さんからフィードバックを受けました。
藤本さんからは「アウトプットをアウトカムとして捉えていないか」や「『当たり前の状態』や『文化が醸成されている社会』とは、どのような状態なのか定義・言語化することが大切」といったコメントがありました。また、「行動変容に関しては、より具体的に定義することが望ましい。解釈の余地がある状態を設定すると、実際には行動変容していないこともあるので、注意が必要」や、「課題解決のためのファーストピンは何か、これを問うことが大切」といったアドバイスもありました。起業家たちはインパクト創出のための登り方について、思考を深める貴重な機会を得ました。
さらに、「ロジックモデルの作成は、上手く書けなくて当たり前。もし簡単に書けてしまった場合は、『あまり考えられていないかもしれない』と疑うべきです」というメッセージもいただき、ロジックモデルを常にアップデートしていくことの重要性が強調されました。
起業家からは、「設定したアウトカムが抽象的だと、本当は達成していなくてもKPI次第で達成したように見えてしまう。一義的なアウトカムが必要だと感じました」や、「漠然と描いていた未来をより解析度高く描いていく大切さを学びました」などのコメントが寄せられました。
講義「ヘルスケア業界のマーケティング」
講師:本田 克徳氏(キャピタルメディカ・ベンチャーズ キャピタリスト)
さまざまな業界でマーケティングマネージャーとして豊富な経験を積んできた本田さんから、「ヘルスケア業界のマーケティング」についてお話をいただきました。今回は、マーケティングを「顧客を獲得するための投資を最適化する活動」と定義して講義が進められました。
本田さんは、「顧客獲得のためにかけるべき費用は単に販促手段の相場で決まるわけではなく、ひとりのお客さんから得られる利益の範囲内で適切に設定する必要性がある」と強調しました。それをコントロールすることがマーケティングであり、特にユニットエコノミクス(※1)の成立が重要であることが併せて伝えられました。
講義では、対象マーケットによって商材単価や顧客獲得のためのプロセスが異なること、さらには顧客の検討状態(サービスの認知や興味度合いなど)による違いがあることが解説されました。また、マーケティングにおけるコミュニケーションの構成要素である「3つのM(※2)」や、「STP分析(※3)」といったフレームワークについても触れられました。
講義の最後には、ヘルスケア業界特有の仕組みや文化についても多角的な視点から紹介され、起業家たちにとって貴重な学びとなりました。
起業家からは、「マーケティングのセグメントはフェーズに応じてブラッシュアップする必要があることが分かりました」や「顧客獲得のためにどれだけ費用をかけるべきか、改めて考える機会となりました」といったコメントが寄せられました。
※1 ユニットエコノミクス:1顧客あたりの採算性。主としてサブスクリプション型のビジネス(SaaSビジネスなど)で多く用いられ、事業の経済性を示す管理会計の指標の1つとして位置付けられる。ユニット・エコノミクスが適正であれば事業は健全な状態とされ、この状態を「ユニット・エコノミクスが成立した状態」という。ユニットエコノミクスは、【LTV(顧客生涯価値)÷ CAC(顧客獲得単価)】の計算式で求められます。
※2 3つのM:Market(顧客セグメンテーション)、Media(Media×購買プロセス)、Message(訴求する価値)
※3 STP分析:マーケティング戦略を策定するためのフレームワークのひとつ。市場を「セグメンテーション(Segmentation)」により細分化し、「ターゲティング(Targeting)」で狙うべき市場を定め、「ポジショニング(Positioning)」によって競合との差別化を図ることで効果的なマーケティングを実行する。
【まとめ】
今回の定例会では、提供サービスのアウトカム評価ができることを目的に、事業のロジックモデルを作成し、発表しました。また「ヘルスケア業界のマーケティング」をテーマとした講義では、マーケティングの基本やヘルスケア業界の特性について学びを深めました。
次回の第5回定例会までの1ヵ月間、6チーム・10名の起業家たちは、マーケティング活動の設計に取り組む課題を進めていきます。11月の最終成果発表会までに、どのような事業に磨き上げられるか楽しみですね。メンターや運営メンバーも全力でサポートしていきます!
プログラムの様子は、こちらのサイト内で適宜配信してまいります。また、キャピタルメディカ・ベンチャーズのX(旧Twitter)や、おうちの診療所のX(旧Twitter)でもプログラムの様子は配信していきますので合わせて御覧ください。