HVK2021 開催レポート①

  1. HVK2021

2021年11 月20日(土)『Healthcare Venture Knot 2021 』が開催されました。

例年であれば日本最大規模のヘルスケアビジネスコンテストとして、「ヘルスケア領域を今より良くしたい」、「課題を解決したい」、と日々研鑽を積んでいる医療者およびヘルスケアベンチャーの皆さまに毎年多数ご参加いただいておりましたが、昨年に続きCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)感染拡大の影響を鑑みてオンライン(Zoomウェビナー)での開催となりました。

本記事では、第一部の様子をお伝えします。


HVKとは

『Healthcare Venture Knot』はキャピタルメディカのコーポレートベンチャーキャピタルである株式会社キャピタルメディカ・ベンチャーズと、株式会社omnihealが運営する医療・介護・福祉領域に関心が高い人のためのコミュニティSustainable Healthcare Incubation Park(以下、SHIP)が主催。ベンチャーの意欲と現場(医療・介護福祉職)の思いをマッチングすること、医療・介護福祉現場の真のニーズに即したアイデアを支援することを目的としています。

タイムテーブル

『ヘルスケア領域での新たな起業家を生み出し、成長をサポートする』というコンセプトのもと、第一部では2つのトークセッション、第二部では2つのピッチとトークセッションが行われました。

13:00 開会
13:20 第一部『ヘルスケア領域での起業チャレンジ』
    トークセッション① 起業への1歩を踏み出す勇気
14:10 トークセッション② 起業家と伴走するシードVCのやっていること
14:50 第二部『日本を代表するヘルスケアスタートアップの組織設計』
    ピッチ① 大企業と共に成長するスタートアップの組織運営
15:15  ピッチ② 急成長するヘルスケアスタートアップの組織運営と継続して学習・成長する組織のあり方
17:00 閉会

今年もメイン司会は石井氏(左)と青木氏(右)


第一部 ヘルスケア領域での起業チャレンジ
▼ トークセッション①|起業への1歩を踏み出す勇気

ヘルスケア領域での課題解決の為に一歩踏み出した女性起業家の皆様にお集まりいただき、起業へ踏み出せた理由やライフイベントと起業いう視点でとトークセッションを行いました。

司会|ウンログ 取締役 長瀬 みなみ
Nenlin 代表 簾藤 麻木(一級建築士)
株式会社ステルラ 代表取締役 西 史織(起業家)
リハノワ  代表 河村 由実子(理学療法士)


Q. 今、なぜ「起業」という選択肢を選んだのですか?
河村氏 2019年のHealthcare Venture KNOTのアイデア部門に出場し、「私も何かしたい」と思いました。イベント終了から2週間後、リハビリの輪をつなげるウェブメディア「リハノワ」の運営を開始。1年半は働きながら取材と記事制作を続け、本格的に力をいれるために2021年3月で病院を退職。翌4月、より取材のしやすい環境である関東へ拠点を移しました。

Q.「起業するときの不安の乗り越え方」を教えてください。
簾藤氏 お金のことや営業などの未経験業務、新規事業の経験がないことなどに不安を感じていました。新規事業については、はじめてみると相談できるところがたくさんありました。それを知ってからは不安は少なくなりました。

西氏 私は金融業界からヘルスケア業界に参入したこともあり、知らない業界だからこそ、参入前の不安はなかったです。参入後にさまざまな不安が出てきましたが、最初に勇気を出して連絡を取った人からいろいろな面でアドバイスをもらうことができました。

Q.「起業して良かったこと」は何ですか?
簾藤氏
 お金以外で言えば、いいことしかないと思っています。世の中にはこんなに課題があって、向き合っている人がこんなにもいるんだということを知りました。もちろんあ大変なこともありますが、毎日生きているという感じがして、とても楽しいです。

西氏 色々ありますが、1つは面白い人に出会えるということにあります。起業後に出会う人は、何か夢を持って、「ここを変えたい!」と行動を起こしている人ばかりなので、とても刺激されます。


Q. ヘルスケア領域での起業における苦労はありますか?
河村氏 医療職として医療界の規制を理解はしていたものの、「ウェブメディアを運営する上で、規制を守りながらマネタイズの仕組みを構築する点」に苦労しています。

西氏 他領域からの参入のため、業界をよく理解していなかったことです。広告のガイドラインなど規制が多い医療業界は、以前ECサイトを立ち上げたときの経験などがまったく役にたたず、今もそれは苦戦しているところです。

Q. 今後の事業展開について教えて下さい。
簾藤氏 今はオンラインショップの運営をしていますが、今後は介護領域にさまざまな作り手(職人)が参入し、産業が生まれることを目指しています。(簾藤さんのされている活動:ケアのデザインストアnenlin

西氏 婦人科の医療機関のハードルを下げる取り組みを続けていきたいです。(西さんのされている活動:婦人科ラボ

河村氏 全国各地のリハビリに励む人や面白い取り組みをしている施設・会社、輝いているセラピストを取材し発信し続けたい。その中でたくさん課題が集まってくるので、仲間を集めながらその課題解決をしていきたいです。(河村さんのされている活動:リハノワ


トークセッション起業家と伴走するシードVCのやっていること

シードVCで活躍するキャピタリストの方々に、普段のお仕事や支援をされている事・起業家との関係性・初めての資金調達のリアルについて本音でトークしていただきました。

司会|HVK運営事務局 石井・青木
Lifetime Ventures  代表パートナー 木村 亮介
Mint  GP 白川 智樹(アプリコット・ベンチャーズ代表取締役)
DIMENSION  中山 航介
Full Commit Partners  代表パートナー 山田 優大


Q. 起業したい人がVCに行くときに気をつけないといけないことはありますか?
中山氏
 フェーズに合わせたVCに行くのがいいと思います。シードVCならアイデアの段階から伴走できます。気軽に相談できるオープンアワーを設定しているVCも多いので、連絡してみるのがお勧めです。資金調達の準備ができた時に相談しに来るよりも、その前の「どうすれば資金調達の面談ができるか」という段階から相談してもらっていいかと思います。

Q. シードVCが気になるポイントってありますか?
白川氏
 「チーム内でケンカが多そうだな」とかあると気になります。ビズリーチでは一番人が集まりにくい土曜午前にあえてチームミーティングを設定したという話があります。最初に高いハードルを設定してみるのはいいかもしれませんね。

Q. 最初に相談しに来るのは個人?それともチーム?
中山氏
 おおかた個人ですね。何しようかな、とまだアイデアが定まっていない人が相談しにくることもあるためです。

山田氏 私の場合は、4分の3はチームです。だいたい2人でくることが多いです。

Q. VCとして相談者のどこを見ていますか?
木村氏 ①その人ならではの専門性などエッジ(強み)があること、②その人が持っていないものを持っている人と仲良くできそうなこと、などを見ています。それらを持っている人は、いいなと思いますね。

白川氏 私は、何か異常なポイントがある人かどうかを見ています。そのコトへの「異常な愛」とか、何か知らなかったことについてものすごくインタビューしているなど「異常な行動力」、翌週会ったときに「異常に変化がある」など。

山田氏 私は、誠実、諦めない、人を惹きつけられる人かどうかを見ています。全部じゃなくても、どれか1つでも突出していると「いいな」と思いますね。

中山氏 お客さんの「おはよう」から「おやすみ」まで追っているかどうか、解像度が異常にクリアであるかどうかなどを見ています。


Q. どんな相談者に会いたいですか?
木村氏 自己紹介を5分くらい延々しゃべれる方ですね。事業計画より、その人自身の強みや愛を知りたいです。

白川氏 起業前からお話しして進めるので、「ここに思い入れがある」など何か1つキーワードを持って来ていただける方ですかね。

山田氏 私は投資先と二人三脚でやるタイプなので、事業にとても関わっています。なので、投資家としてではなく伴走者として相談してくれる方に会いたいです。

中山氏 このテーマを解決したい!と強く思うテーマがある方です。どう事業にしていくかは相談しながら考えていけばいいので、課題意識だけ持って来てほしいです。

どちらのセッションもとても盛り上がりました。

続く開催レポート②では、第二部の様子をお伝えします!